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弁護士への質問 見つかりました 41
会社が損害を被った場合、本来は会社自身が取締役に対して損害賠償請求を行うことができますが、会社がそれをしないとき、一定の株式数を持つ株主が会社に代わって取締役を訴える「株主代表訴訟」を提起することが可能です。ここでは取締役が故意または重大な過失で職務上の義務に違反し、会社に損害を与えたと認定されれば、個人として賠償責任を負うことになります。典型例として、取締役が不正な取引や背任行為を行った場合や、リスクの高すぎる投資判断をして会社資産を毀損したなどが挙げられます。株主代表訴訟は取締役の経営判断を裁判所で厳しく審査する場面が増え、実務上も大手企業での例が散見されるため、取締役は適切な意思決定プロセスを踏んだ証拠(議事録、専門家意見など)を残すコンプライアンス対応が重要です。
近年、契約書面をPDF化し、電子署名や電子認証サービスを利用して締結する「電子契約」が普及しています。紙の契約書に比べ、製本・郵送の手間とコストが削減できる反面、法的に問題はないか気にする企業も多いです。日本の電子署名・電子文書の法制(電子署名法やe-文書法)によって、要件を満たした電子契約は紙の契約書と同様の効力を持つと認められています。また、印紙税も紙の文書に対する税制度であり、電子契約書は課税文書に当たらないため印紙税は不要とされています。ただ、電子署名の信頼性を保つために、タイムスタンプを付与したり、信頼できる電子認証局のサービスを利用するなどの実務的な配慮が必要です。事後トラブルを防ぐためにも、どのような電子契約システムを導入するか検討し、社内の運用ルールを明確化することが大切でしょう。
会社法上、監査機能の形態として「監査役(または監査役会)」を置くか、「監査等委員会設置会社」や「指名委員会等設置会社」の形態を選ぶことが可能です。従来の監査役は、業務監査と会計監査の両方を担い、社外監査役を含む監査役会では互いに協議して監査報告を作成します。一方で監査等委員会設置会社は、取締役会内に監査等委員会を設置し、取締役の中から監査等委員が選任されるため、取締役自体が監査を行う仕組みとなり、機動的な監査が行えるとされています。ただしどちらも社外メンバーを一定数加えることで公正な監査を実現する狙いがあり、社外監査役(あるいは社外監査等委員)の役割は企業のガバナンス強化に非常に重要となります。社外の視点から経営陣を牽制し、不正や利益相反を未然に防ぐ期待があるのです。
株主総会は会社の最高意思決定機関とされ、取締役や監査役の選任・解任、計算書類(決算)の承認、定款変更など重要事項について決議を行います。その中で、会社法上「普通決議」と「特別決議」に分かれており、普通決議は出席株主の議決権の過半数で可決するものを指します(取締役の選任や計算書類の承認など)。一方、定款変更や減資、組織再編行為(合併や会社分割など)など、会社の根幹を揺るがす重大な事項は特別決議として、出席株主の2/3以上の賛成が必要になります。これによって株主の意思を重く反映し、経営の安定性と少数株主保護のバランスを図っています。
会社法改正により、株主総会の招集通知などで株主リストを活用し、登記申請時にも株主リストの提出が求められるケースが拡大しています。特に株式譲渡制限のある非公開会社や大株主が多数いる会社では、株主ごとの持株数や住所・氏名を正確に管理しなければリストに誤りが生じる可能性があります。法務局に提出するリストが間違っていると登記が受理されず、会社運営に支障を来す恐れもあります。実際には株主名簿管理人や株式担当部署が定期的にデータを更新し、株式移転や贈与、相続などのトランザクション発生時に正確に記録を反映する必要があります。株主名簿と株主リストの違いを把握しつつ、備置義務(本店に保管し利害関係人が閲覧できる)にも対応できる体制づくりが重要です。
株主総会を開催する際、会社法では原則として株主総会の日の2週間前までに書面または電磁的方法で招集通知を発する必要があると定められています。上場会社の場合は1か月前に招集通知を発送するケースが増えていますが、それは実務的な株主への配慮や議決権行使の期間確保のための運用です。最近は株主総会のデジタル化が進んでおり、電磁的方法(メールやウェブサイト掲載)の活用で紙の送付コストを削減する企業も増えています。ただし、株主が電磁的方法を希望しない場合には書面での通知を提供する必要があり、また電磁的方法に切り替えるには株主の事前同意が原則として必要です。実務では、発送時期とともに同封資料の正確性・分かりやすさが重要となるため、招集通知の作成段階で取締役会やIR部門が連携し、ミスのないようチェックを厳重に行うことが求められます。
日本企業が海外に子会社を設立する際、現地の会社法や投資規制、労働法、税制など多岐にわたる法令の遵守が必要です。さらに現地では日本と異なるコーポレートガバナンスや会計基準が適用される場合があり、複雑さが増します。実務的には現地の法律事務所やコンサルタントを活用して設立手続きやライセンス取得を進め、同時に本社側で子会社管理ルールを整備することが大切です。経営陣をどのように派遣するか、株式の持ち方や配当の仕組み、現地での資金繰りなどを踏まえた計画が必要であり、場合によっては日本本社が外国法人形態をとる合弁会社を設立して現地パートナーと協働する例もあります。いずれにせよ、現地法のコンプライアンスリスクや賄賂防止法制を十分に把握し、本社との間で適切な報告体制と会計監査を確保することが欠かせません。
持株会社形態やグループ経営を行う上で、親会社が子会社の管理をどの程度まで行うか、会社法や企業統治の観点から検討する必要があります。過度に子会社を細かく支配すれば親子間取引の独禁法リスクや、子会社の社外取締役の機能が形骸化する恐れがあります。しかし放任しすぎると、子会社で不祥事が起きた際にグループ全体の信用を損ねるリスクが高まります。実務的には、子会社の取締役会への親会社役員の派遣や、重要案件での親会社事前承認ルールなどを定めてコントロールを適度に効かせることが多いです。さらに子会社の内部統制システムを定期的にチェックし、リスク管理やコンプライアンス体制をグループ全体で整えることが大切です。
株式会社や合同会社などの法人を新たに設立する場合、まず定款を作成し、それを公証人による認証を受ける手続きが欠かせません。定款には目的や商号、本店所在地、出資者の氏名や出資額などを詳細に記載し、法令に反しない構成にする必要があります。また定款に記載する事項によって会社の運営方法や意思決定の枠組みが大きく左右されるため、将来の事業展開や増資、組織変更を踏まえて慎重に条項を検討することが重要です。公証人認証の際には定款に不備があると修正を要する場合があり、設立スケジュールに影響が出ることもあるため、専門家と相談しながら計画的に進めることが望ましいです。
中小企業が融資を受ける際や重要取引を開始する際に、代表取締役個人が連帯保証人に立つことがよくあります。これは、会社に十分な資産や信用力がない場合、金融機関や取引先が経営者個人の資力をあてにしているためです。しかし、会社が破綻した際に金融機関や取引先が個人保証に基づいて代表者の個人資産を差し押さえる例が多く、結果的に代表者が自己破産に追い込まれるケースもしばしば発生します。法的には、代表者が自由な意思で保証契約を締結している以上、連帯保証の効力は有効です。近年は「事業者のための貸付慣行ガイドライン」が整備され、保証の濫用を抑制する動きがありますが、実際の取引で代表者保証を排除することはまだ難しいのが現状です。