- ホーム
- 質問
弁護士への質問 見つかりました 50
公共調達で開札した結果、全ての入札価格が予定価格を上回って落札者が決まらない状況(不調)になることがあります。この場合、発注機関は設計書や仕様書を見直してコストダウン可能か検討したり、予定価格の設定が厳しすぎなかったか再評価します。その上で、入札を再公告するか、随意契約に切り替えるかなどの判断が行われます。再度入札を行う際には、前回の反省を踏まえた仕様変更や価格要件の調整が行われるのが一般的で、スケジュールが大幅に遅れれば事業全体に影響が出る恐れがあるため、迅速な対応が求められます。
欧米では政府調達がGPA(WTO政府調達協定)やEUの調達指令などで厳格に規定されており、入札公告や契約情報の公開もきめ細かく行われる傾向があります。また、小規模事業者や社会的企業を支援するセットアサイド制度(一定比率をマイノリティや女性経営企業に割り当てる)など、政策目標を調達と結びつける仕組みも盛んです。一方、日本では国や自治体ごとの制度がバラバラで、地域経済振興や環境対応などの目標を総合評価方式で取り入れる程度にとどまる例が多く、欧米ほど積極的な政策連携は進んでいません。さらに日本は「最低価格落札方式」の割合が依然として高く、業者間談合や品質低下への懸念が根強いです。
公共調達法の原則として、入札で落札された後に契約締結前に価格を再交渉する行為は、公平性を損なう懸念があり基本的には認められません。仮に落札者が「価格が安すぎて採算が合わない」と訴えたとしても、原則は契約を履行する義務があります。ただ、仕様書の重大なミスや不可抗力的な事情で設計変更が不可避となった場合は、変更契約として補正する余地はありますが、これはあくまで客観的理由がある場合に限られます。一方、落札後に安易な値上げ交渉を受け入れると、入札を形骸化した不正と見なされるため、監査や会計検査院から厳しく指摘されるリスクがあります。
一度談合や不正受給、指名停止などの処分を受けた企業が再び公共調達市場に参加するには、一定期間の謹慎や再発防止策の策定を経て、指名停止期間満了後に信頼回復を図る必要があります。再発防止策としては、社内コンプライアンス体制の強化、従業員研修や内部通報制度の充実、不正防止マニュアルの作成などが求められる場合が多く、自治体や発注機関からヒアリングを受けた上で指名回復が認められることもあります。企業としては、二度と違反を起こさないという強い姿勢を示し、過去の事例を真摯に反省することが再起の鍵となります。
公共調達において談合行為が社会的に大きな問題となったことから、入札談合等関与行為防止法が制定されました。この法律では、発注機関の職員が業者間の談合を助長したり、入札情報を漏らしたりする行為が禁止され、違反すれば懲戒処分や刑事罰の対象となり得ます。従来は業者同士の不正のみが注目されてきましたが、発注者側の職員が競争を歪めるような行為を行えば大きな責任を問われるのがこの法律の特徴です。発注担当者が特定業者に便宜を図ったり、予定価格を事前に漏らすなどの行為は重大な違反として扱われます。
大規模な公共工事や高度技術を要するプロジェクトでは、複数の建設会社やコンサルタント企業がJV(共同企業体)を組成して入札に参加することが一般的です。JV方式では各社が得意分野を分担し、大きな工事を効率的に進めるメリットがある一方、契約上の責任分担を明確に定めておかないと、工事遅延や追加費用の際に紛争が起きやすくなります。公共調達法ではJVでの参加要件を定めている場合があり、技術者数や工事実績を合算して評価する仕組みが許容されているため、中小企業が大手とJVを組んで大型案件に参入するチャンスが得られるケースもあります。
行政のITシステム開発を公共調達する際、要件定義が不十分なまま入札してしまうと、落札後に大量の追加開発が発生し、最終的に契約金額が大幅に増えるトラブルが多発します。これは公共調達法上も深刻な課題で、仕様書に盛り込まれる機能要件が曖昧なため、業者側が安値で落札しておき、後から「これは想定外だから追加費用が必要」と主張するケースに繋がるのです。行政側も必要機能を明確化できずに契約しているため、追加予算を再確保するなど事業が遅延し、コスト増加が避けられません。
日本の会計検査院は、国の収入支出や国が出資する法人などに対して検査権限を持ち、公共工事や物品納入などが適正に行われているかをチェックします。公共調達法や財政法上、適切な手続きで契約が締結され、妥当な価格で履行されているか、談合や不正支出がないかを検査の対象とするのです。違反や不当支出が見つかれば、是正措置や関係者への追及が行われ、重大な場合は国会にも報告されるため、調達担当部局は会計検査院からの指摘を避けるために綿密な書類管理と手続き遵守を図ります。
PFI(Private Finance Initiative)事業は、公共施設の整備や運営を民間の資金やノウハウを活用して行うスキームで、PFI法に基づき官民連携を促進する仕組みです。通常の公共調達に比べて長期契約(数十年単位)で民間が設計・建設・運営・資金調達を一括して担い、その対価を公共側が支払うか、利用者料金から収益を得る形となることが多いです。公共調達法上、PFI事業は単なる工事発注とは異なり、企画提案やリスク分担、長期のサービス提供まで含むため、総合評価落札方式や特別な審査プロセスを経て事業者が選定されます。大規模プロジェクトでは事業者側もコンソーシアムを組成し、金融機関の融資とともに参画するケースが一般的です。
建設工事の入札では、業者がVE提案(バリューエンジニアリング)を行い、コスト削減や工期短縮、品質向上を図る取り組みが評価されることがあります。VE提案とは、設計図書に示された仕様を見直し、代替材料や施工方法の改善により同等以上の性能を保ちつつコストを下げる手法です。公共調達においては入札段階でVE提案を募るケースと、落札後の施工段階でVE提案を受け付けるケースがあり、前者は総合評価落札方式の技術点に反映されることが多いです。後者の場合は、発注者が提案のメリットを認めれば変更契約を締結し、工事費の一部を削減した分を業者側と発注者側で分配する仕組みを取る場合があります。