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弁護士への質問 見つかりました 48
旧労働契約法第20条(現在はパートタイム・有期雇用労働法に統合)には、有期雇用労働者と無期雇用労働者との間で不合理な労働条件の相違を禁止する規定があり、同一労働同一賃金の趣旨を反映しています。具体的には仕事内容や責任範囲が同じにもかかわらず有期契約だから給与や手当が著しく低い、福利厚生を利用できないなどが不合理と認定される場合があります。裁判例(ハマキョウレックス事件など)では、有期契約社員に賞与や退職金を一切支払わないのは不合理だと判断された事例があり、企業には待遇差を正当化する根拠を示す必要が求められます。
2015年改正の労働者派遣法では、同一組織単位(同一部署など)に同じ派遣労働者を受け入れられる最長期間が3年と定められました。加えて、派遣先全体としても同一の派遣労働者を3年を超えて継続利用できない仕組みとなり、これを超える場合は派遣先が直接雇用するか、別の部署へ異動させるなどの対応が必要とされています。改正前は「26業務」の専門業務なら期間制限なしだったところが改められ、より広範な派遣労働の規制強化が図られました。企業側は定期的な受け入れ状況のチェックが義務づけられ、労働者への雇用安定措置が求められています。
女性労働者が出産のために休業を取る場合、産前産後休業中に健康保険から支給される「出産手当金」があり、これはおおむね賃金日額の2/3が支給されます。一方、育児休業給付金は雇用保険の制度で、産後休業終了後に育児休業へ移行してから受給できるため、産休期間(産後8週間まで)は育児休業給付金は原則対象外です。つまり、まず産後8週間までは出産手当金を受け取り、そこから育児休業を開始すれば雇用保険の育児休業給付金が支給される形で、期間が連続しつつ給付金の趣旨が変わることになります。
自己申告制であっても、会社が労働時間を正確に把握し、適正な残業代を支払う義務は変わりません。自己申告を理由に「社員が申告しなかったから残業代ゼロでOK」とするのは労働基準法違反となる可能性が大です。厚生労働省のガイドラインによれば、自己申告制を導入する際には、会社は労働者が正しく時間を申告できる環境を整え、実際の時間外労働との乖離がないようチェックする責任があります。もし乖離があれば再調査し、実労働時間に基づいて賃金を支払う必要があります。
法律上、アルバイトであっても労働契約が成立している以上、退職するには民法や労働契約法に基づく手続きが必要となります。正社員との違いは契約期間の有無であり、期間の定めがないアルバイトなら2週間前に辞意を伝えれば退職可能です(民法627条)。ただし就業規則や契約書で1か月前など長めの予告期間を定めている場合もあり、そちらに従うことが一般的ですが、あまりに長期の制限は無効の可能性もあります。実務では書面(退職届)提出が望ましいですが、口頭だけでも有効に辞職を主張できます。
求人票に記載された労働条件と、入社後に提示された条件が大きく食い違う場合、労働契約法や職業安定法違反となる可能性があります。職業安定法では求人票の内容に虚偽があってはならず、実際の賃金や勤務時間と異なる情報を掲載して人を募集すると行政指導や罰則の対象になることがあります。労働者はハローワークや労基署、弁護士などに相談して、損害賠償や入社取消などを検討するケースもありますが、裁判で「詐欺求人」と立証するのは簡単ではありません。
インターンシップの形態によっては、学生と企業の間に実質的な労働契約が成立すると見なされる可能性があります。単なる就業体験や職場見学に近いインターンであれば、労働法の適用対象外とされやすいですが、実際に業務を行い、会社にとって有用な労働力として機能しているのであれば賃金支払い義務が生じることがあります。無料で学生を働かせる名目で実質的には労働を提供させていると、最低賃金法や労基法違反になるリスクがあるため、企業は実習内容と労働契約の有無を明確に区分しなければなりません。
労働安全衛生法では、事業者(使用者)は職場での災害防止に必要な安全衛生管理体制を構築する義務を負います。例えば、安全衛生管理者や産業医の選任、衛生委員会の設置、危険有害作業のルール化、防護具の支給や点検、定期健康診断の実施など、多岐にわたる規定があります。これらを怠って労働災害が起きた場合、会社や経営者が業務上過失致死傷罪や労安法違反で刑事責任を追及される可能性があります。特に建設現場や化学工場などではリスクが高いため、安全衛生教育やKY活動(危険予知活動)が法的にも強く求められます。
日本では明確な『セクハラ防止法』という名前の法律は存在しませんが、男女雇用機会均等法(以下、均等法)にセクシュアルハラスメントの防止義務が規定されています。使用者は社内でセクハラが起こらないよう措置を講じる義務があり、対策を怠ると厚生労働省から是正指導を受ける可能性があります。セクハラには「対価型」と「環境型」があり、前者は性的言動を拒否すると不利益を受けるような事例、後者は性的な言動で職場環境が悪化する事例を指します。
労基法第24条は、労働者の賃金を直接かつ全額支払う「全額払いの原則」を定めていますが、労使協定を結んで特定の控除項目を定めれば、給与天引きが認められる場合があります。例えば、社員食堂の利用代金や社宅費用などは本人同意と労使協定があれば天引きが可能です。ただし、制服代は労働者が負担する性質かどうかが問題となり、会社が一方的に「制服代を給与から差し引く」と決めても、労働者が納得せず労使協定も存在しないなら違法になる恐れがあります。