海事裁判では、海難事故の客観的データ(航海計器の記録、VDR=Voyage Data Recorderデータ、船舶AIS情報など)や船級協会の検査結果が重要な証拠となります。衝突事件であれば、レーダー画像や航跡再現ソフトを用いて衝突までの位置関係を復元し、過失の有無や回避可能性を分析します。専門的な事項については裁判所が鑑定人を選任し、船舶工学や航海術に精通した技術者が鑑定報告書を提出する流れが一般的です。当事者双方も鑑定意見書を準備することがあり、技術的争点をめぐる対立が大きいケースでは鑑定人尋問が行われることもあります。最終的には裁判官が鑑定内容や他の証拠を総合的に評価し、過失割合や損害額を認定するプロセスとなります。